ワイネイトレ
ポエムを覚えないといけないのか…
ポエムは心からほとばしるもんや
ここでもいくつかあったやろ
星降る石畳を踏んで君はゆく。
一歩半だけ先を、怒ったように忙しなく。
もろびとこぞる市場の中を、
その細い脚で縫うように淀みなく、
騒ぐ人波をかきわけて。
店先は光で満ちて、
きらめく品々は眩しく鮮やかだ。
甘いホットチョコレートの湯気に、
シナモンの香りが乗って夜を温めている。
この冬の日の喧噪の中で
その小さな肩を見失わずに済んでいるのは、
間違いなく君自身のおかげだった。
「何してんの、はぐれないでよ」
振り向いて、ぶっきらぼうに君は言う。
頷き返すと、すぐに前を向いてしまう。
ただ一歩半だけ先を、
それ以上決して引き離さないように、
細心の注意を払いながら君はゆく。
時折、ちらちらと振り返る視線に、
気づかないふりをして後を追う。
気づいたことがわかったら、
そのとたんにこの聖なる1歩半が
ぐんと伸びて消えてしまうからだ。
聖夜の月明かりを受けて君はゆく。
1歩半だけ先を、誰よりも優しく慎重に。
その小さな肩を見失わずに済んでいるのは、
間違いなく君自身のおかげだった。
これどういうこと?日本語下手くそのワイにはよくわからん
常に一歩半の距離を維持するタイシンのおかげで見失わずにすむってことや
なるほどそういうことなんか助かる
もっと怪文書読んで勉強するんや
存在が重くて儚くて透明ですぐ目を離したら消えそうだから仕方ない
こういうのでいいんだよ
ライターが徹夜でレッドブル開けながら書いてそう
スマートフォンの通知音が鳴った。
メッセージアプリ・LANEに、
表示された最新メッセージ、
『アストンマーチャンが
ファイルを送信しました』
見れば送られてきたのは
音声ファイルのようだ。
別途メッセージは……
待てども送られてこない。
──再生ボタンをタップする。
『バッテリー、異常なし。
マイク機能も大丈夫。ぶいぶいですね。』
『それでは始めます、
アストンマーチャンラジオ~。
なんて、普段は言わないんですけど』
『なお本日は危なくないように、
塔屋から空を眺めます。
脚はぶらぶらさせておきましょう。
……怖くなんかありませんから。』
『──周りには、昨日降ったザーザー雨で、
水たまりがたくさん。そのおかげで
マーちゃんは空と空のあいだにいます。
上にある大きな空と、下にある小さな空と』
『わたしは今、空のあいだにいます』
音声ファイルの再生を止め、
椅子から立ち上がる。
頭に浮かんだ行き先は、
学園で空がきれいに見える場所。
階段を全速力で走って向かえば、
彼女はまんまるな瞳をもっと丸くして、
困ったように笑うのだろうか。
「……はい。マーちゃんはここにいました」